Calling Out Of Context/Arthur Russell

今回は、70年代のディスコ~
現代のクラブミュージックに大きな影響を与えたと言われるアーサー・ラッセルの未発表音源集のご紹介です。

まずは、アーサー・ラッセルの説明を簡単に。チェロ奏者/現代音楽家という肩書きで活動していたミュージシャンです。おそらく大半の人があまり耳にしない人だとは思うのですが、(この記事に辿りついた方はご存知かもしれませんが...) いわゆる前衛音楽、アヴァンギャルドな作品を残していた人です。残念なことに40歳の若さで92年にエイズで亡くなっていて、世間で評価されたのは死後だいぶ経ってからでした。

チェロのみで反復リズムを作ってダンスミュージックとしたり、またノイジーなチェロにパーカッションを交えるなど本当に実験的なことを繰り返した人で、その中のキャリアで現在におけるディスコクラシックを連発したのです。(個人的には、わかりやすいディスコチューンは、『Dinosaur L』や『Indian Ocean』といった彼の別名義によるものの方が多い気がするのですが...)
それらの実験的な試行の全てが、今や当たり前となっているハウスやテクノのジャンルレスな横断の礎となっているのです。

といってもあまりにメディアの露出が少なかった上に、非常に芸術家気質で作品作りには偏執的なものがあったようでポップな作品は正直少ないと言わざるを得ません。譜面にして一日以上の演奏となる楽曲を作りあげたり。あまりにリズム狂であるがためにチェロを打楽器的に弾く以外は、全くのノークリックという曲もあります。そんな彼だったので、死後10年以上発表されなかった曲が1000曲以上あったそうです。

それを埋もれさせてはいかんと、かの有名なラフ・トレード、SOUL JAZZ、そして本作リリース元のP-VINEなどのレーベルが世にガラージ、ミニマム、シカゴ・ハウスなどが入り交じった2004年前後に再発の動きに出たのです。
私はその時よりもう少し遅れて聴きました。(70年代ノー・ウェイブのリバイバー、ディスコ・パンクの名手であるDFAからの流れです。) 初聴きは「World Of Echo」というその再発シリーズの中でも最も評価が高く傑作といわれたものだったのですが、最初はチンプンカンプンでした。
あまりにミニマムに構築されててこれは本当に聴き込まないとわからないぞ...というのが本音でした。それでしばらく違うところを掘っていこうと思った時に本作に出会ったのです。

本作はアーサー・ラッセル作品の中でもおそらく最もアヴァンギャルド色が薄く、それこそディスコ・クラシックの系譜にあると思います。ハウス聴き込んでる人は問題なく聴けると思います。
そんな本作を聴いて「はじめてアーサー・ラッセルに近づけた!」と思えたときに、ようやく少し評価されている理由がわかりました。
各方面で言われている通り、現在のジャンルレスな手法全部やっちゃっているんです。かつ、歌が乗ってソングとして成り立っています。
普通クラブでかかる音楽というのは踊るためのものであり、一つの楽曲たりえる事は難しいです。作品としてコンパイルする時は別ですが、基本的にはそういう快楽の音楽に尽きる面がダンスミュージックにはあると思います。
それでも一つの楽曲と仕上げつつ実験性があって踊れるっていうのは、そりゃ再評価されてお手本になりますよ。もう天才としか言いようがないですね。

本作のテイストは今で言うと、ディスコというよりはハウスに括った方がわかりやすいのではないかと思います。かなり気持ちいいです。グイグイくる感じとは対極の徹底した浮遊感です。これが10年~20年前から存在して評価されなかったのも凄いって感じです。
これからアーサー・ラッセルという方にはネームバリューのある「World Of Echo」や「World Of Arthur Russel」より本作から聴くことをオススメします。
アルバム全体を見ても一番バランス良くまとまっていると思います

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このページは、webmasterが2010年8月 6日 18:51に書いたブログ記事です。

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